パワハラ対策導入手順と中小企業での取り組み方

こんにちは。
社会保険労務士事務所みらいの酒井です。

先週の飯村さんのブログにもありましたが、秋、運動会シーズン!!

ですが、ここ横浜市では、春に運動会を開催する小学校が
増えているのだそうです。
春開催 177校、秋開催 168校。
半数近くですね。

2学期制になり、前期は4月から10月、後期は11月から3月となったので、
前期の試験の時期と重なってしまうから、とか、
秋の方が天候が不順だから、とか、
児童の新学年での人間関係づくりを促すため、とか
いろいろ理由はあるようです。

スポーツの春、って、ちょっと言い慣れなくて不思議な感覚・・・
でも、さわやかで悪くないです。
秋は、勉学の秋、なんですね。
ガンバレ受験生!(うちにも一人おります・・・冷汗)

 

さて、これまではパワハラの現状やパワハラ対策セミナーの様子について
書き綴ってきましたが、
今回は、パワハラ対策の基本的枠組みの構築手順についてです。

社内でハラスメント対策をしよう!と具体的に動き始めたら、
下記の流れで進めると、計画が立てやすいんです。

 

予防するために
トップのメッセージ
⇒組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す
ルールを決める
⇒就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する。
予防・解決についての方針やガイドラインを作成する
実態を把握する
⇒従業員アンケートを実施する
教育する
⇒研修を実施する
周知する
⇒組織の方針や取組について周知・啓発を実施する

解決するために
相談や解決の場を設置する
⇒企業内・外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める。
外部専門家と連携する。
再発防止のための取組
⇒行為者に対する再発防止研修等を行う。

 

約6ヵ月で、実施できるようにスケジューリングすると、この図のようになります。

介
出典:厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル」

実は、このパワハラ対策支援セミナーの後に、過重労働対策セミナーにも参加したのですが、ここでも「トップからの発信」の重要性を繰り返していたんです。
「ハラスメントなくすぞ!宣言」
「時間外労働 短くするぞ!宣言」
会社を変えるぞ!良くするぞ!という、社長の強い意志発信が最初に必要なんですね。

 

さて、
ひとつ、質問をいただきました。

「大企業では手順通りにパワハラ対策できるかもしれないけど。少人数の事務所とか、
相談窓口なんて設置できそうもない規模の会社だったらどうするの?」

確かに、平成27年度の厚生労働省調査では、下図のとおり、中小企業ではあまり取り組みがされていないようです・・・

※以下に記載の「中小企業」とは、「建設業、製造業、情報通信業、運輸業・郵便業、その他の産業」については 299 人以下、「卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、医療、福祉、教育、学習支援業、その他のサービス業」については 99人以下としており、中小企業法の定義(小売業は 49 人以下)とは若干異なっています。

中小対策
出典:厚生労働省委託事業「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」

 

中小企業でのパワハラ対策の取り組みとしては、
①「会議や朝礼での注意喚起」(28.2%)
②「就業規則などへの規定」(24.0%)
③「相談窓口の設置」(21.0%)
の順となっており、現状では、就業規則や相談窓口などの制度面よりも、「注意喚起」といった日常の働きかけが中心となっているようです。

今後の予定としても、「特に取組を考えていない」と回答した企業が45.7%!

まだまだ積極的な取り組みへの戸惑いがあるみたいですね。

「規模が小さいから無理」「忙しいからそんな暇はない」
「問題が起こったら対応すればいい」などと考えるのではなく、ハラスメント対応の重要性を認識し、日頃から、企業・事業所の規模や職場の実態に応じた対応をきちんとできる体制を整備しておくことが大切です。

 

「相談窓口」の設置が難しい場合、相談担当者の選任を行います。

相談担当者の選任にあたっての留意事項は
・ ハラスメント等の問題に対する十分な理解を持つ人を選任すること。
・ 1人ではなく、できる限り複数の者を選任すること。
・ セクハラ、男女差別が関連するケースも考えられるため、女性を選任するほうが望ましいです。

とは言え、中小企業では、被害者は、こんな不安を抱きがちではないでしょうか。
・ 人間関係が緊密だし・・・プライバシーが確保されないのでは?
・ 周知の間柄だけに、予断や偏見が生じるのでは?
・ 職場の地位や力関係が働いて、納得のいかないけど、解決に導かれるのでは?
・ 法律や規定に詳しくなくて、正しい判断ができないのでは?

確かに、どれも「中小企業あるある」ですよね。
これでは不安になってしまう方もいるかも。

企業内解決のみにこだわるのではなく、社外の外部機関のサービスを併せて利用し、
対策を進めることも検討する必要がありますね。

 

外部機関、と言っても、どんなところに相談したら良いのかわからないわあ。
相談料が有料だったらイヤだなあ・・という方にご紹介したいのは、公的機関の労働相談や従業員支援プログラムです。

(1)会社がある場所の労働局または労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」
労働者、事業主どちらからの相談でも、専門の相談員が面談あるいは電話で受け付けています。
無料です。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

(2)(神奈川県内限定となりますが) かながわ労働センター
労使間のトラブルが円満に解決され、合理的な労使関係が確立できるよう中立的な立場から問題点を整理し、法律や判例の考え方を説明し、状況に応じた具体的な解決方法や解決に至る道筋を助言してくれます。
相談は無料で、相談に関して秘密は厳守してくれます。
労働者だけでなく使用者からの相談も受け付けています。
日曜日も受け付けてくれる時間帯があります。

かながわ労働センターは、かながわ労働プラザというビルに入っているのですが、
この9階にはレストランがあり、マリンタワーとベイブリッジが見えるんです!
以前、行ったときには、「これぞ・横浜」を満喫できましたよー。(これはちょっと余計な情報でした・・)
http://www.pref.kanagawa.jp/div/1480/

 

(3)EAP
EAPは、従業員支援プログラム(employee assistance program)の省略形で、もともとは、企業内で従業員のメンタルヘルスケアのための包括的なプログラムを作成し、実施することを意味していますが、こうした取組みを外部の企業や専門家に委託ないし委嘱する「外部EAP」のことを一般に「EAP」と呼びます。

例としては
・地域産業保健センター
・都道府県産業保健推進センター(メンタルヘルス対策支援センター)
・健康保険組合 ・労災病院 ・中央労働災害防止協会
などで受託してくれます。

 

こうした外部の相談窓口を相談者に紹介する際には、
・ 相談者にていねいに情報提供を行う。
・ 相談窓口に確実につながることができるように、相談者の了承を得たうえで、可能な限り連絡先に直接連絡を取り、相談の場所、日時等を具体的に設定して相談者に伝える。
・ 一緒に連絡先に出向くことが難しい場合は、地図やパンフレットを渡したり、連携先へのアクセス(交通手段、経費等)等の情報を提供するなどの支援を行う。
・ 連携した後も、必要があれば相談にのることを伝える。

こんな心遣いがあるといいですね。

 

これまで社内での様々なハラスメントについて、実態や対策の取り組み方などをまとめてまいりましたが、私自身のことを振り返ってみると、いつも周りには信頼できる先輩や親身になってくれる同期がいたなあ、と思います。
話をする、愚痴を聞いてもらうだけでも、随分と気が楽になりました。

ハラスメント対策には、トップの方の方針や、相談窓口の設置など大切なことがたくさんあり、長い連載となりましたが、
ひとりひとりが意識を高く持ち、せっかくご縁があって働き始めた職場を
良くしていこうという気持ちも大事なのではないかと思います。
ただし、「無理はしない主義」でね。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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社会保険労務士事務所みらいを、引続きよろしくお願い申し上げます。

 

みらいでも素敵なメンバーに恵まれています。

酒井

 

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