労働時間制度あれこれ(2) 1年単位の変形労働時間制

皆さんこんにちは。

社会保険労務士事務所みらいの小池です。

平成が終わり、令和になって早一ヵ月ですね。

令和という元号にも段々慣れてきました。

昭和から平成になった際は、昭和天皇崩御によるものだったので、

重苦しい空気だったのですが(連日昭和天皇の容体がニュースで流れていましたしね)、

今回は譲位によるものなので、明るいムードでよかったですね。

カウントダウンをしているテレビ局などもあったので、

何か新年を二度迎えた気分でした。

 

そんな気分で迎えた令和初日から、青森県に住む友人の所へ遊びに行ってきました。

青森県には20代の頃、仕事で何度か行ったことはあったのですが、

観光で行くのは初めてでした。

弘前公園の桜、八甲田の雪の壁、青森と五所川原のねぶた博物館などを

案内してもらいました。

いやー、ねぶたって凄い規模(大きさ)なんですね。

特に五所川原の立佞武多(たちねぷた)の高さといったら、ほぼビルですね。

実際にお祭りの時に行って、見てみたくなりました。

 

 

さて、今回は1年単位の変形労働時間制についてです。

1年単位の変形労働時間制は主に季節などにより繁閑の差がある業務について、

労働時間の効率的な配分を行うために設けられた制度です。

 

1ヵ月単位の変形労働時間制の場合は、就業規則に定めがあれば、

労使協定の届出は必要なかったのですが、

1年単位の変形労働時間制を導入するには、必ず労使協定を締結し、

管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

締結する労使協定には、必ず下記の事項を定める必要があります。

(1)対象となる労働者の範囲

⇒ 特に制限はありませんが、明確に対象範囲を定める必要があります。

(年少者(一部例外あり)、本人から請求のあった妊産婦は対象外となります。)

(2)対象期間と起算日

⇒ 1ヵ月を超え、1年以内の期間で定める必要があります。

3ヵ月や6ヵ月単位でも可能です。

(3)特定期間

⇒ 対象期間の中で、特に業務の繁忙な時期を特定期間といいます。

特定期間は連続勤務日数の限度が他の期間と異なります。(後述します。)

期間は任意で定めることができ、複数の期間を定めることもできます。

特定期間を定めない場合は、定めない旨の記載が必要です。

対象期間の大部分を特定期間とすることは、法の趣旨に反するとされ、

認められません。

対象期間中に特定期間を変更することはできません。

(4)対象期間における労働日と労働日ごとの労働時間

⇒ 原則的には対象期間全期間の労働日と各労働日ごとの労働時間

定める必要があります。

(5)労使協定の有効期間

⇒ 1年程度とするのが望ましいとされています。(最長でも3年以内)

 

上記(4)にもあるように、原則としてあらかじめ対象期間の全期間において、

労働日と労働日ごとの労働時間を定めることが必要となります。

例外として、対象期間を1ヵ月以上の期間ごとに区分する場合には、

区分された最初の期間の労働日と各労働日ごとの労働時間を定め、

残りの各期間においては、労働日数及び総労働時間だけを定めておくことも

認められます。

その場合、各期間の始まる30日前までに、労働日と各労働日の労働時間を

労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数の代表者)の同意を得て、

書面により定める必要があります。

1年変形 (2)
東京労働局 「1年単位の変形労働時間制導入の手引き」より

 

1年単位の変形労働時間制は対象となる期間が長いため、

労働日数、労働時間等に限度が設けられています。

 

<労働日数の限度>

対象期間が3ヵ月を超える場合には、1年あたり280日が労働日数の限度となります。

対象期間が3ヵ月を超え、1年未満の場合は、

280×対象期間の暦日数÷365日の式で計算した日数(端数切捨て)が限度となります。

対象期間が3ヵ月を超えない場合は、週1回の休日が与えられていれば問題ありません。

 

<連続労働日数の限度>

対象期間における連続労働日数の限度は原則6日間です。

労使協定で定めた特定期間の場合は、1週間に1日の休日が確保できる日数となります。

したがって、最長で連続12日となります。(下図参照)

連続勤務日数

東京労働局 「1年単位の変形労働時間制導入の手引き」より

 

<1日および1週間の労働時間の限度>

対象期間の長短に関係なく、1日の労働時間の限度は10時間

1週間の労働時間の限度は52時間です。

対象期間が3ヵ月を超える場合は、上記に加え、

以下のア・イの条件も満たさなければなりません。

ア 労働時間が48時間を超える週は連続3回まで

イ 対象期間の初日から3ヵ月ごとに区分した各期間において、

  48時間を超える週の初日の数が3以下

文章で見るとなかなか理解し難いのですが、下記の図を見ていただけると、

理解し易いかと思います。

労働時間

東京労働局 「1年単位の変形労働時間制導入の手引き」より

※積雪地域で一定の業務に従事する方については、イの条件がなくなります。

隔日勤務のタクシー運転手については、1日16時間、1週52時間が上限となり、

イの条件はなくなります。

 

時間外労働となる時間の考え方は、1ヵ月単位の変形労働時間制と同様となります。

ただし、中途採用者や中途退職者のように、

1年単位の変形労働時間制で労働させた期間が、対象期間より短い労働者の場合は、

労働させた期間の1週間平均の労働時間が40時間を超えている場合には、

超えた時間について割増賃金を支払わなくてはいけません

(既に時間外労働として割増賃金を支払われている部分(予め定めていた1日もしくは週の労働時間を超えて労働した部分など)は除きます。)

 

 

このように、1年単位の変形労働時間制は様々な制約があります。

事前に1年間の勤務日、勤務時間を確定するとかかなりハードルが高いですよね。

労使協定の届出の際には、協定届の他に年間のカレンダー

(各月の労働日数、労働時間数などを記載したもの)も添付します。

この時点で年間の労働時間や労働日数の上限を超えていないかもチェックする訳です。

勤怠管理も複雑になってくるため、上級者向けの制度かもしれませんね。

 

 

「人」と「組織」と「社会」のみらいのために

社会保険労務士事務所みらいのスタッフブログ。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

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