労働基準法入門 その1

はじめまして 今回からブログを担当します高橋です。
どうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年度4月です! 新入社員の姿をよく見かけますね。
最近は、働き方や労働条件について、新聞などマスコミで取り上げられることが多くなりました。労働者も労働条件に敏感になっているようですし、最近では会社側も自社の労働条件に力を入れてアピールすることが多いようです。

そこで、このシリーズでは、労働条件についての法律、「労働基準法」について取り上げてみます。意外と、きちんと読んだことがある人は少ないのではないでしょうか?

1.労働基準法はなぜ作られたのか、歴史的背景

労働基準法はなぜ作られたのでしょうか?
本来、契約自由の原則からいえば、使用者と労働者の契約も自由に決められるはずです。
しかし、現実には使用者の力が強いため、労働者が低劣な労働条件で働かざるをえない、という歴史的背景がありました。
そこで、労働関係では、契約自由の原則を修正し、労働条件の最低基準を定めた労働基準法が制定されたのです。

2.労働基準法の全体像と基本理念

さて、労働基準法の全体像を見てみましょう。
第一章 総則~ 第一三章 罰則まであります。

まず第一章 総則 で労働条件に関する基本理念を定め、
第二章 労働契約
第三章 賃金
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
・・・といった具合に、具体的な内容に入っていきます。

まずは、第一章 総則 で定める基本理念をいくつかピックアップして見てみます。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めたものです。この基準を下回ることはできません。
また、この基準を理由に労働条件を低下させてはいけません。
この条文は、日本国憲法第二五条第一項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とした生存権保障と趣旨を同じくするものです。

・労使対等の原則(第二条)
【第二条 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
② 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。】

現実にある力関係の不平等を解決するという理念を明らかにしたものです。
第二項では、対等な地位に基づいて決定された当然の結果として、両当事者の遵守及び誠実な履行を要求されることを明記しています。

・均等待遇の原則(第三条)
【第三条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない

「信条」とは宗教上の信仰、思想上の信念、政治的信条を含むとされています。

・男女同一賃金の原則(第四条)
【第四条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。】

従来の封建的構造による男女間の差別があったという歴史的背景から、特に顕著な弊害の認められた賃金について、差別的取り扱いを禁止したものです。

・強制労働の禁止(第五条)
【第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。】

かつて土建の飯場、鉱山の納屋等にみられた「監獄部屋」「タコ部屋」等はその典型的なものです。それ以外でも労働者の精神や身体の自由を不当に拘束する手段として、以下のようなものが挙げられます。


【賠償額予定契約】
賠償額予定契約とは、労働契約が履行されなかった場合に違約金や損害賠償額を支払うことを予定する契約を指します。例えば「違約金として××万円支払うこと」と決めている契約などです。賠償額予定契約は労働基準法第十六条でも禁止されていますが、労働者を不当に拘束する手段と言えます。

【前借金相殺契約】
前借金相殺契約とは、働くことを条件に労働者にお金を貸しつける契約のことです。借金を返すまで退職を認めないケースなどが該当します。

3.労働基準法の適用範囲

(1)保護の対象となる労働者とは?

さて、労働基準法でいう「労働者」とはどういう人を指すのでしょう?
条文では次のように定められています。

【第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう】

よって、代表取締役は「労働者」になりません。
フリーランスで働く人も「労働者」になりません。
他方、法人の重役で、代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて「労働者」とされています。

(2)適用除外となるケース

同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人は適用除外されます。
また国家公務員、船員等は、適用の一部又は全部が除外されます。

4.守らないとどうなる?

上記のように定められている労働基準法を、もし守らなかったらどうなるのでしょうか?

(1)刑事上の罰則

すべての規定ではありませんが、違反すると罰則が定められているものがあります。
最も重いのは、強制労働の禁止(第五条)に違反した場合です。
1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」になります。(第百十七条)

(2)民事上の効果

労働基準法に違反する契約は無効となり、無効となった部分は労働基準法が定める基準で置き換えられます(第一三条)

次回予告など

今回は、労働基準法の基本的理念などを中心に見てきてました。

次回はもう少し、具体的な内容に踏み込んで、「賃金」について取り上げる予定です。お楽しみに。

高橋

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