実力発揮、出来ていますか?

前回のコラムにて、
能力とは「保有」しているもの
実力とは「発揮」しているもの
ということを述べました。

東京オリンピックが始まりましたが、この能力と実力の関係から、
オリンピック観戦をするといろんなことが思い浮かんできます。

能力と実力の関係について、もう少し考えてみたいと思います。

金メダルを取った選手の皆さんについては心から祝福したいと思いますし、
残念ながらメダルに届かなかった方々についても、
今までの努力に対して敬服したいと思います。

サッカーについても、楽勝と思われた南アフリカには苦戦し、
かなり難しいと思ったメキシコについては開始早々に2点を入れて、
見事に勝利を収めることが出来ています。

競泳の女子400M個人メドレーに優勝した大橋悠依選手は、
能力に優れていることは勿論ですが、実力を遺憾なく発揮できたことが、
金メダルにつながったと感じます。

一方同じ競技の男子で世界ランク1位になっていた瀬戸大也選手は、
まさかの予選落ちしてしまいました。

ご本人を責めることは勿論できませんが、
最後の自由型100M を泳いでいる間に何があったのか知りたいです。

まさに能力はあったが実力が発揮できなかったことの典型例でした。

あれだけ高い運動能力を持っていて誰もが認める第一人者だった彼が、
本番を前に実力を発揮できずにその場を去らなければならなかったこと。

その原因については彼のみぞ知るのではないかとは思いますが、
でもその原因を事前に解消することが出来なかったのかもしれません

一方、金メダルを獲得した大橋選手ですが、
大会のHPにとても面白いことが掛かれています。

苦手の平泳ぎを克服したことが勝利のポイントということが、多く報道されていますが、
それだけでないことが大会公式HPから伝わってきます。
https://olympics.com/tokyo-2020/ja/news/news-20210725-03-ja

「日本選手権で最下位、不調の原因は「貧血」」
「不安なことも話せる信頼関係があった」

こんな気になる見出しがHPに上がっています。

2度のどん底を経験した大橋選手。
最初のどん底は2015年頃に経験した貧血だったそうです。

いくら練習してもタイムが伸びず、病院で検査したら貧血と分かり、
投薬療法や食生活の改善の効果もあり、体調の回復するに従って、
タイムが伸びていったそうです。

不調の原因が「不健康」にあり、それを改善したことで実力発揮できたそうです。

でも今度はメンタルの問題でどん底に落ちてしまったそうです。

「緊張しやすく、いろいろなことを想像して勝手に不安を作り出してしまうタイプ」なんだそうで、無意識のうちに自分で重しを乗せてしまっていたそうです。

メンタルに課題を抱え、一人で悩んでいたときに、信頼するコーチとコミュニケーション取れたことが彼女を救ったようです。

HPに以下のように記載されています。

一番苦しいときに信頼関係を失ってしまうと、選手は「一人ぼっち」という気持ちになってしまうものなんです。

孤独感と戦うにはコーチやチーム、仲間の存在がすごく影響してくるので、そういう部分が安定し、そして「話せる」という信頼関係があった。

悩んでいることもコーチに言えただろうし、「不安なんです」という気持ちも話せる関係を築けていたんじゃないでしょうか。

 

「不安」という「不」が彼女の実力発揮を妨げているものであったことですが、コーチとコミュニケーションを密にとって、お互いが同じ方向に向けたということで、大橋選手も心が決まって、安心感や安定感が宿ったそうです。

まさしく「不」の解消によって、「安心」「安定」が生まれ、実力を遺憾なく発揮できたことを知ることが出来ます。

個人と組織においても、能力と実力の問題について、考えてみる価値があります。

能力を伸ばす人材育成・人材開発の重要性について、大変重要ですし、大いに議論されるのは結構なことです。

しかしそれだけでは不十分であることが、オリンピックを見ていても感じます。

人それぞれが伸び伸びと実力を発揮できるようにすることが「組織開発」です。

能力を高めるだけでは難しい、実力発揮の世界では、「不」の解消を行うことが重要であることを大橋選手の事例が教えてくれると思います。

個人のことだけではなく、組織においても同様です。

社会心理学者のI.D.スタイナー氏は、
実際の生産性=潜在的な生産性-プロセス・ロス
と公式化しています。

集団で何か行おうとすると、それぞれが精一杯の力を発揮しているのに、目指すべき方向性や息が合わずに効果が薄れてしまうことがあります。

それを「プロセス・ロス」と呼びます。

一方、三人が集まることで相互支援や相乗効果が生まれ、能力以上の力を発揮することが出来ることを「プロセスゲイン」と呼びます。

潜在的な能力が高くても、実力を発揮できなかったとすれば、
そこにはどんな欠損プロセスが存在していたのでしょうか。

そしてどのようなことを行えば、相乗効果によるプロセスゲインを得ることが出来るでしょうか。

現場では

潜在的な生産性(能力)-欠損プロセス+プロセスゲイン

という状態が生まれています。

能力を高めることを追求するだけではなく、
組織が実力を発揮できる環境を作り出すことが、
組織としての大きな成果、成長をもたらすことになるでしょう。

不の解消から実力を発揮する組織づくりに取り組んでみませんか。

職場の基礎代謝改善ファシリテーター
荒木康之

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私のブログはこちらでまとめてご覧いただけます。

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