
同一労働同一賃金。
正規労働者と非正規労働者の間の不合理な待遇差を禁止する法律が施行されたのは、大企業では2020年の4月、中小企業では2021年4月からのことでした。
法律の施行に併せ厚生労働省からガイドラインが出ていましたが、5年で見直すとの方針が当初から公表されておりました。
正規労働者と非正規労働者の間の不合理な待遇差を禁止することを定めた法律は、「パートタイム・有期労働法」と「労働者派遣法」の2つです。
労働者派遣法への対応に関しては次回に回し、今回はパートタイム・有期労働法に関することに限定します。
法律の施行当時、法律改正に対応しなくても良いか、とお問合せ頂いた際には、急いで対応する必要な無い、と回答していました。
といいますのは、法律に定める解釈には曖昧なことが多く、どの状態が「不合理ではない」と判断される基準が明確にはなっていないからです。
厚生労働省から出されているガイドラインにしても、おおよその基準が示されているにすぎません。
ガイドライン自身がガイドラインで示している基準を満たしていても、民事で争われる範囲に含まれると述べています。
同一労働同一賃金は判例等の事例の積み重ねを受けて、長い時間をかけて合意形成されていくものであると、国が認めているからです。
その意味で判例に注目される一方で、現実にはなかなか実態の把握が進んでいないということがあるのでしょう。
昨年11月末に同一労働同一賃金を扱う都道府県労働局の雇用環境・均等部門と労働基準監督署が連携し、労基署の定期監督などの際に非正規労働者の処遇の実態について事実確認を行うとの発表が有りました。
この事実確認によって、基本給や諸手当などの処遇について確認するとともに、情報を受けた雇用環境・均等部門での調査の対象企業の選定を行っていくとのことです。
どのような情報収集が監督署の定期監督などの調査によって実施されるのか、国が考えている同一労働同一賃金の差別的取り扱いの禁止として重視するのか、など事実確認の内容に関心を持っておりました。
先日、最低賃金の調査を主目的にした監督署の定期監査が行われ、関与先2社が該当したので調査に立ち会うことにいたしました。
調査の最後に監督官から提出を求められたのが、画像の同一労働同一賃金に関するチェックリストで、監督官からチェックリストを頂くことが出来ました。

表面は、社名とパートタイム・有期労働法の認知度について回答します。

裏面で具体的に待遇について聞いてきているのは「手順3」です。
ここでは賃金と休暇について聞いています。
基本給・賞与・精皆勤手当・通勤手当・食事手当・慶弔休暇・その他の7項目について、
支給の有無や身分による取り扱いの違いについて回答します。
ここの下の囲みでは、
「正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者とでは、働き方や役割などが異なれば、それに応じて待遇が異なることはあり得ます。待遇御違いがある場合、その違いは、働き方や役割などの違いに見合った、「不合理でない」ものと言える必要があります。」
と記載されています。
まさに同一労働同一賃金を簡潔に表現している分です。
待遇に差が有っても、働き方や役割などの違いに見合っていれば問題なく、その差を説明出来れば良い、と法律の意味が端的に表されています。
そして「手順4」。
違いを設けている理由を説明できるかどうか、を聞いています。
手順3で差があり、手順4でその差を説明できない、という回答をした事業所については、
雇用環境・均等部門からの調査対象となりやすいとも考えられます。
このようにチェックリストでの回答を集めていき、実態を把握しながら指導が強化され、次のガイドラインに反映されていくものと推察されます。
まずはこのチェックリストの手順3と手順4について、自社でどうなっているかを確認しましょう。
ここが同一労働同一賃金への対応の第一歩になります。
荒木康之

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