こんにちは。
社会保険労務士事務所みらいの酒井です。
2023年になっての初投稿です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

これまで、労災についていろいろ書いてきましたが、
「本人の不注意・過失による怪我や疾病は、労災申請できないのか」
という点について考えてみたいと思います。
通勤途中や業務中に、気をつけていても、うっかり不注意で怪我をしてしまうこともあります。
事業主様の側から考えると、「労働者が自分でミスして怪我したのに、なんで会社の労災を使わせなきゃならんのだ!」と思われるかもしれません。
東京労働局のHPにこんな質問がありました。
Q 従業員が営業車で営業中に事故を起こして入院した。
従業員は労災申請を希望しているが、事故の原因がスピードの出し過ぎだったこともあり、会社としては労災の請求を認めたくない。
それに対しての回答は、「従業員が労災請求することを制限してはダメです」としています。
A 労災の請求は、被災者本人の意思で行い、労働基準監督署が支給・不支給の決定をするので、労災請求の権利を制限することはできません。
事故は、業務としての営業活動中なので、業務上の災害として認められると考えます。
ただし、スピードの出し過ぎが事故の原因と言えるので、労災保険給付の一部が支払われないことがあります。
例えば、雨の日にサンダルで業務を行っていて、階段ですべって怪我をした、という場合。
会社としては、階段に手すりをつけたり、滑り止めを設置していたので、サンダルなんかで階段を下りていた従業員が悪い!だから労災申請させない!
と、いうわけにはいきません。
ただし、次の場合には、労災保険給付に制限がかかります。
労働者災害補償保険法によると、給付制限となるのは、次の3つ。
① 労働者が故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。
② 労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。
③ 正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。
難しく書いてあります・・・が、纏めてみますと

① については、労働者が故意に事故を起こしたので、すべての労災の保険給付が行われません。
でも、②と③については、制限されるのは、休業と傷病と障害の給付だけです。
療養(補償)給付、介護(補償)給付、遺族(補償)給付、葬祭料(葬祭給付)及び二次健康診断等給付は、制限なしで支給されます。
治療費=療養(補償)給付は、支給されるんですね。
なぜか。
労災保険は、労働者を守るための保険。
治療費である療養(補償)給付などを制限してしまうと、労働者の保護ができない、という理由だそうです。
実際の労災認定、支給制限の決定は、労働基準監督署が行います。
迷ったときは、労働基準監督署へ相談してくださいね。
これまでのブログもご参考になれば幸いです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
酒井