
皆様こんにちは。
社会保険労務士事務所みらいの一條です。
夏はお祭り!
この夏、何年かぶりに青森のねぶた祭りを見てきました。
コロナの関係で制限はあったようでしたが、
盛り上がっていました。
活気をもらい、関東のまだまだ暑い夏を乗り切りたいです。
改正育児・介護休業法では労使協定を結ぶことで、
改正前と同様に
育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、短時間勤務の対象者を
限定することができるとしています。
新たな要素として
令和4年10月1日から始まる子の出生後8週間以内に最大4週間休業できる「出生時育児休業(産後パパ育休)」の申出期限と就労についても、労使協定を結ぶことで可能とする内容も加わりました。
今回は、労使協定で規定できる
「適用除外関係」と「出生時育児休業関係(申出期限と就労)」
について取り上げます。
厚生労働省HPでは、労使協定例が公開されています。
このブログでは、労使協定例を元に内容を確認していきます。

図は厚生労働省の労使協定例を加工(説明文、注意書き部分削除)
適用除外関係は第1条~第7条
出生時育児休業関係は第9条と第10条
で定めています。
これから今年10月1日改正に合わせた内容で労使協定を締結する場合には
「出生時育児休業(産後パパ育休)」の申出期限と就労の規定を
入れるかどうかを検討する必要が出てきます。
たとえば
・出生時育児休業中は「就業無し」、申出期限は法定どおり(2週間前まで)場合
⇒サンプルの第9条、第10条を削除します。
・出生時育児休業中「就業有り」、申出期限を延ばしたい(2週間~1か月前まで)場合
⇒サンプルをそのまま使用できます。
育介休法関係の労使協定は、労働基準監督署長への届出は不要となっています。
それでは、内容を見ていきます。
適用除外関係のうち、育児休業の取得に関わる部分では、
事業主は下記に該当する労働者からの取得を拒むことができます。
(育介法第6条第1項、育介則第8条)
1、 引き続き雇用された期間が1年未満
2、申出の日から起算して1年以内(1歳から1歳6か月に達するまでの子および1歳6か月から2歳に達するまでの子の申出をする場合は6か月)以内に雇用関係が終了することが明らか
3、1週間の所定労働日数が2日以下
改正によって有期雇用労働者の取得要件緩和されたものの
労使協定で上記1を規定することにより、結局、要件緩和はされないことになります。
労使協定による適用除外については、
適用除外として定められたすべての要件に該当していることは求められてはいません。
労使協定の対象者は有期雇用労働者だけではなく、無期雇用労働者も入ります。
たとえば、
1週間の所定労働日数が2日以下の無期雇用労働者が
勤続1年以上たった後に育休取得の申出をしたとしても
会社は育休取得を拒んで問題ありません。
内容を定める上で注意が必要なのは
育介法第6条第1項および育介則第8条は、
労使協定を締結した場合に育休の対象から除外できる者の範囲の最大限度を示しており、これよりも広い範囲で除外できる者を定めることはできないことです。
たとえば、
男性はすべて育児休業の対象から除外する旨の労使協定を締結することはできません。
(厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(令和4年3月作成) P23)
続いて、出生時育児休業に係る部分です。
出生時育児休業の特徴は、通常の育休とは違い
労働者が合意した範囲で休業中に就業することが法律で認められている点です。
ただし、出生時育児休業中の就業については
労使協定の規定がないと就業させることができないことになっています。
そのため、就業の可能性があるならば、
「出生時育児休業中の就業を希望する従業員は、就業可能日等を申出ることができるものとする」
と労使協定に一文入れておく必要が出てきます。
もう一つ、出生時育児休業の申出期限は法律上2週間前までとなっていますが、
労使協定を結ぶことで2週間超~1か月前までと期限を延ばすことができます。
業務の調整のため、少しでも早く予定を把握したい、
管理が大変なので通常の育休の申出期限(1か月前まで)に合わせたい等
会社の事情によって、どのように規定するか検討する必要があるでしょう。
気を付けたいのは、申出期限を延長するには条件があることです。
規定する場合、下記①~③すべての取り組みをしなければなりません。
① 次に掲げるア~オの措置のうち、2つ以上の措置を講ずること。
ア 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する研修の実施
イ 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
ウ 自社の労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)取得事例の収集・提供
エ 自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
オ 育児休業申出をした労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置
② 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得に関する定量的な目標(1)を設定し、育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得の促進に関する方針を周知すること。
③ 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置(2)を講じた上で、その意向を把握するための取組(3)を行うこと
⑴ 定量的な目標は、数値目標であり、育児休業のほか、企業独自の育児目的休暇を含めた取得率を設定するこ とも可能ですが、少なくとも男性の取得状況に関する目標設定が必要です。
⑵ 妊娠・出産の申出があった場合に意向確認の措置を行うことは、この労使協定の締結にかかわらず、法律上 の義務になります。
⑶「 意向を把握するための取組」は、法律上の義務を上回る取組とすることが必要です。最初の意向確認のため の措置の後に、返事がないような場合は、リマインドを少なくとも1回は行うことが必要です(そこで、労働 者から「まだ決められない」などの回答があった場合は、未定という形で把握)。
会社によっては、既存の労使協定から内容・文言自体も変える必要がなく、
今回の改正に合わせて再締結する必要があるか、迷うケースがあると思われます。
この点については、厚生労働省では、あらためて結び直すように求めています。
(厚生労働省「令和3年改正育児・介護休業法に関する Q&A」Q4-3、A4-3)
次回は
「改正育児・介護休業法 ~3 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設~」
を取り上げる予定です。
「人」と「組織」と「社会」のみらいのために
社会保険労務士事務所みらいのスタッフブログ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
一條