
皆様こんにちは。
社会保険労務士事務所みらいの一條です。
先日、厚生労働省が公表した令和3年人口動態統計月報年計(概数)によると、
2021年に生まれた子供の数(出生数)は81万1604人で
前年より2万9231人減少し、過去最少となりました。
1人の女性が生涯に産む見込みの子供の数を示す「合計特殊出生率」も1.30で、
前年より0.03 ポイント低下し、政府が目標とする「希望出生率1.8」も下回っています。

(図は厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」から抜粋)
少子化が進む一方ですが、今回の育児・介護休業法の改正によって
少しでも少子化の加速が緩やかになってくれるといいなと思います。
今回は改正育児・介護休業法により
今年4月1日から事業主に義務付けられた
有期雇用労働者の育児休業・介護休業取得要件の緩和
を取り上げます。
有期雇用労働者とは、
パート、派遣、契約社員など雇用期間の定めのある労働者
を指します。
有期雇用労働者の休業申出要件の緩和は
雇用形態にかかわらず、育児休業と介護休業を取得しやすくなること
を目的に行われました。
改正後の要件は下記のとおりです。
●育児休業
(1) 引き続き雇用された期間が1年以上 ⇒撤廃
(2) 1歳6か月までの間にその労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない
●介護休業
(1) 引き続き雇用された期間が1年以上 ⇒撤廃
(2) 介護休業開始予定日から93日経過日から6か月を経過する
日までに契約が満了することが明らかでない
育児休業、介護休業とも
(1)「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が撤廃されたため、
無期雇用労働者(フルタイム社員など雇用期間の定めがない労働者)
と同じ扱いになりました。
では、引き続き残る(2)の要件を詳しくみていきましょう。
育児休業であれば「子が1歳6か月に達する日までに」
「労働契約が満了することが明らかではない」とは、
具体的にどのようなことを指しているのでしょうか。
厚生労働省が公開しているQ&Aでは、
●休業の申出があった時点で労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断されること
●事業主が「更新しない」旨の明示をしていない場合については、原則として、「更新しない」とは判断されず、「労働契約が満了することが明らか」には当たらないこととなること
(改正法 Q&AQ4-2、 A4-2)
と示しています。
さらに「更新が無いことが確実」とされ、
育休の申出が認められない具体例も挙げています。
α 雇入れ時に契約更新回数が1年ごと2回までと決まっていて(更新無の明示有)、2回目の契約期間終了日が子の1歳6か月に達する日前にあるパターン

β 雇入れ時に3年の雇用契約と決まっていて(更新無の明示有)、雇用契約終了日が子1歳6か月に達する日前にあるパターン。

(図は厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(令和4年3月作成)」P16から抜粋)
ただし、α、βのケースに該当する場合であっても、
(1)雇用の継続の見込みに関する事業主の言動
(2)同様の地位にある他の労働者の状況
(3)当該労働者の過去の契約の更新状況等
の実態を見て、要件を満たさない場合には、更新が無いとは確実に言えないと
判断される場合があります。
(厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(令和4年3月作成)」P16)
たとえば、「更新する場合がある」という雇用契約の結び方は、
雇用契約の更新が無いことが「確実」とは言えないので注意が必要です。
また、有期雇用労働者から育児休業の申出があった場合には、
事業主は有期雇用労働者の雇用契約の更新の上限やその期限、
そして、更新期間終了日が子の1歳6か月に達する日の前かどうかを
申出があった時点で把握しておかなければ、育休を取らせなくてもよい労働者に
取らせてしまうという事態も起こりえるかもしれません。
ところで、
改正により有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されたとしても
法による労使協定による適用除外の規定については、引き続き残ることになりました。
続きは次回ブログで書こうと思います。
次回は
「改正育児・介護休業法 ~労使協定による適用除外~」
を取り上げる予定です。
「人」と「組織」と「社会」のみらいのために
社会保険労務士事務所みらいのスタッフブログ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
一條