改正育児・介護休業法~育児休業を取得しやすい雇用環境整備の措置の義務~

皆様こんにちは。

社会保険労務士事務所みらいの一條です。

 

先日、下の子を保育園に迎えに行ったときにちょうど地震がありました。

園内の廊下にいても揺れに気が付かなったのですが、放送がかかり

近くの先生からすぐ部屋に入るように指示されて部屋で待機。

部屋では幼児〇人、保護者〇人、保育士・・と事務所と連絡を取る先生、

子供や周りのものを見て状況確認する先生。

すぐに待機解除の放送が流れましたが、

地震発生時の先生方の機敏な対応に感動しました。

マニュアルがあってもいざというときに動けるかどうかは

日々の訓練があってからこそ発揮されるのでしょうね。

 

 

 

今回は前回の続きで、

改正育児・介護休業法により

今年4月1日から事業主に義務付けられた

2、育児休業を取得しやすい雇用環境整備の措置の義務(育介法第22条)

を取り上げます。

 

 

事業主は、育休(令和4年10月1日から出生時育児休業(産後パパ育休)も含む)の申し出が円滑に行われるようにするため、下記の雇用環境整備の措置のうち、少なくともどれか一つは必ず行わなければなりません。

 

① 育休に関する研修の実施

② 育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

③ 自社の育休取得事例の収集・提供

④ 自社の育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

 

育介法指針では、育休申出が円滑に行われるようにするため

●短期はもとより一か月以上の⾧期の休業の取得を希望する労働者が希望するとおりの期間の休業を申出し取得できるように配慮すること

●可能な限り、複数の措置を行うことが望ましいものであること

 

と示しています。

 

今回の改正は男性の育休取得促進を主な目的の一つとしていますが、

育休を取得しやすい雇用環境の整備は、

男性だけ対象に実施すればよいわけではなく、男女問わず対象とする必要があります。

(厚生労働省 令和3年改正育児・介護休業法に関する Q&A  Q3-3、A3-3参照)

 

 

番号順に詳しくみていきましょう。

 

育介法通達によると、

①「研修」については

・雇用する全ての労働者に対して研修を実施することが望ましいものであるが、少なくとも管理職の者については研修を受けたことのある状態にすべきものであること

・研修の実施に当たっては、定期的に実施する、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられる

としています。

 

研修の例としては

・年1回以上、育児休業制度(出生時育児休業含む)の意義や制度の内容、申請方法等に関するもの

があります。

 

研修に関しては、別途研修を設けなくても育休に関する内容で他研修の一部として実施しても問題ありません。

 

研修資料に関しては、

イクメンプロジェクトサイト↓に、職場内研修用資料として動画とパワーポイントが掲載されており、社内用にアレンジする等して活用することができます。

https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company/training/

  

②「相談体制の整備」とは、

相談窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知することを意味します。

窓口を形式的に設けるだけではなく、実質的に相談に対応できる体制を整えていれば、

必ずしも物理的な窓口設置に限られずメールアドレスやURLを定めて相談窓口として周知する方法も可能です。

労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。

 

既に育児休業に関する相談窓口がある場合、上記の対応ができていれば、

新たに整備をすることをしなくても、雇用環境整備措置を講じたものとなります。

(Q&A Q3-4、A3-4参照)

 

 

③ 「自社の育休取得の事例提供」とは、

自社の育児休業の取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供することを意味します。

 

事例の収集、提供に当たっては、

男女双方の事例を収集し、提供することが原則であるが、男女いずれかの対象者がいない場合に片方のみとなることはやむを得ないこと。また、提供する取得事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集、提供することにより、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮すること

とされています。

(育介法通達)

 

事例提供の例として

・四半期に1回、育児休業取得体験談や取得時の上司・同僚の反応、職場で行った具体的な育児休業取得促進の方法等をメールで紹介

・半年ごとに育児休業取得者と子どもが生まれる従業員の座談会を開催し、体験談等他の従業員の参考になる情報を社内報で紹介

などがあります。

 

④「方針の周知」とは、

育休に関する制度及び育休の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することを意味します。

 

例として

・当社の育児休業制度をまとめた冊子を作成し、育児休業の取得の促進に関する方針とあわせてイントラネットで閲覧できるようにする

・育児休業制度と育児休業取得促進の方針を記載したポスターを各部署に掲示する

があります。

(①~④の事例は厚生労働省 育児・介護休業法令和3年(2021年改正内容の解説)P16から抜粋)

 

今回新設された雇用環境整備措置については、

社内に育児期の社員がおらず、採用する予定もない会社の場合、実施すべきかどうか

迷うかもしれません。

対象者がいない場合であっても、

上記①~④のいずれか一つは必ず行わなければならない

ことに注意が必要です。

 

理由は

・育児休業の申出対象となる子には、※養子縁組等も含まれていることから、特定の年齢に限らず幅広い年齢の労働者が育児休業申出を行う可能性がある

・雇用環境の整備の措置を求めている法第 22 条では、義務の対象となる事業主を限定していないことから、全ての事業主が雇用環境の整備をする必要がある

からです。

( Q&A  Q3-5、A3-5参照)

※特別養子縁組制度 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html

※養子縁組里親 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/syakaiteki_yougo/02.html

 

四つの措置のうち、どれが自社で取り組めるかを検討し、実施していきましょう。

 

 

次回は

「改正育児・介護休業法 ~有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和~」

を取り上げる予定です。

 

「人」と「組織」と「社会」のみらいのために

 

社会保険労務士事務所みらいのスタッフブログ。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

一條

コメントを残す