小規模事業主の雇用調整助成金

雇用調整助成金については、支給の申請にあたり書類作成が非常に面倒であったり、添付書類の準備が大変であったりと色々と評判が悪くなっていました。

そのため何度も何度も制度の簡素化や拡充が行われてきていましたが、簡素化される一方で複雑化も見受けられ、迷宮入りしそうになってきます。

そこで従業員数が少ない事業主を対象に、かなり簡素化された手続きが行えるように変わってきております。

小規模事業主に向けた簡素化の特例については、5月19日に公表されていたものです。

この小規模事業主とは、雇用調整助成金の要領においては、常時雇用する労働者が概ね20人以下の事業主のことをいう、とされています。

ここでポイントとなるのは、以下の3点になります。
①概ね20人以下とは?
②常時雇用する労働者とは雇用保険被保険者に限定されるのか?
③小規模事業主の範囲は、事業場の単位になるのか?

①の人数についてですが、この「概ね」という言い方が紛らわしく、混乱を生じていましたが、どうやら29人以下の場合を対象とする、となっています。

そのため今回のタイトルも「従業員29人以下」としております。

②常時雇用する労働者とは、雇用保険の被保険者に限定されるかどうか、については、限定はしないという見解です。

よって雇用保険に加入している、していない、に関わらず、全ての労働者の人数で判断することになります。

③小規模事業主の範囲についてですが、これは通常の雇用調整助成金(以下:通常)においても良く認識違いをしてしまいがちなところです。

例えば、会社は5つの店舗を持つ飲食店と食品の製造業を経営している場合を取り上げましょう。

・各店舗では多くても10人の従業員が働いていて、製造工場では20人の従業員が働いている。

・36協定も就業規則も全ての店と工場で別々に届出している。

・労働保険番号は店舗は一括してまとめているが、製造工場としては労災保険料率が違うので別の番号がある。

・雇用保険としては適用事業所は一つの番号で手続きをしている。

このような場合に、どう判断するかですけど、店舗ごとか、店舗と工場で別々になるか、それとも全部まとめるのでしょうか?

結論は雇用保険の適用事業所として判断します。

雇用調整助成金は、雇用保険における制度なので、雇用調整助成金における適用事業所の単位で申請を行います。

従って今回の事例に挙げたものは、店舗と工場をまとめて人数をカウントし、小規模に該当するかしないかを判断しますので、29人を超えることが明らかなので小規模には該当しません。

もし複数の労働保険番号がある場合には、それぞれの確定保険料の申告書類の写しを添付すると支給決定が早くなるでしょう。

小規模事業主のメリット

手続を行う際のメリットは、

書類が大幅に簡略化されていること!

申請に必要な書類は3つだけで、一つのエクセルファイルにシンプルにまとめられています。

通常では必須とされている休業協定書も不要になります。

通常の場合には、少なくなったとはいえまだまだ書類も多いですし、ややこしい部分が残っています。

審査する書類が少ないということは、申請後の審査が素早く行われることになり、結果支給が早く行われることにつながります。

小規模事業主のデメリット

通常と比較して支給される助成金が少なくなる可能性がある

小規模事業主の場合、実際に支払う休業手当の額の全額(上限15000円)を支給します。
(解雇等をせず、かつ、雇用を維持されている場合。それ以外の場合は8割支給。)

仕組みが非常にシンプルで分かりやすいのは好感が持てます。

ただ、通常の場合、支給金額は実際に支給した金額ではなく、前年度の雇用保険料の確定申告の元となる賃金総額と労働者数と所定労働日数から割り出した数字に基づいて支給します。

そのため、通常で計算したほうが高い助成金受給額となる可能性があります

実際ご相談に対応した関与先様でも、10人未満でしたが、通常を選択した事例がありました。

反対に、グループ企業なのですが、1つの法人では29人以下であり、小規模で計算したほうが金額が多かったということが有り、グループの他の法人は通常で行いましたが、一つだけ小規模で行った事例もあります。

よって、29人以下の場合、まずは通常の場合の助成金額を試算し、支払う休業手当の額と比較し、休業手当の方が多い場合は小規模を、そうでなければ通常を選択することになるでしょう。

ちょっと面倒かもしれませんが、大事な確認ポイントです。

現在公表されている最新版の支給申請マニュアルは、6月25日に改定されたものになっています。

ご利用される方は、都度都度ダウンロードされることをお勧めします。

小規模事業主用:雇用調整助成金支給申請マニュアル(6/25改正版)
https://www.mhlw.go.jp/content/000636722.pdf

雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウィルス感染症対策特例措置用、小規模事業主用含む)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyouchouseijoseikin_20200410_forms.html

雇用保険の被保険者ではない従業員に対して支払った休業手当が対象となる、緊急雇用安定助成金の場合は、雇用調整助成金とは異なり、通常でも小規模でも、実際に支払う休業手当を元に助成金を計算します。

よって先のデメリットとして取り上げたことは対象になりませんので、小規模で申請をして頂くことになるでしょう。

小規模事業主用:緊急雇用安定助成金支給申請マニュアル(6/25改正版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000639657.pdf

荒木

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