年休を拒否できる場合とは

年休の拒否

年次有給休暇(以下:年休)を取りたい、と従業員が申し出したら拒否できません。

一方、申し出た日の業務が極めて繁忙であるならば、取得する日を変更することが出来るとされていますが、今回のブログではそれと違って、本当に申し出を拒否できるケースについて触れてみましょう。

 

労働基準法第39条により、年休をいつ取るか、また、それをどのように利用するかは、労働者の自由となっています。

会社は、休暇の理由によって、休暇を与えたり与えなかったりすることはできません
(白石営林署事件・最二小判昭和48年3月2日)。

ただし、例えば、一度に多数の労働者が同じ時期に休暇を取るなどすれば、事業の正常な運営を妨げることも考えられます。

そこで、事業に支障が出るときに限り、会社は、年次有給休暇を他の日に振り替えることができ、これを「時季変更権」といいます。

‍「時季」とは聞きなれない言葉ですが、法律上はこの言葉が用いられてまして、季節を含めた時期を意味します。

時季変更権とは、使用者側が年休の取得日を一方的に指定する権利ではなく、年休の請求を拒否しないけど、別の時期に改めて請求してくれというものです。

したがって、従業員としては改めて年休の取得日を請求することとなり、このコラムのテーマである拒否には該当しません。

 

では改めて、年休の請求を拒否できる場合とはどんな場合でしょうか?

 

年休の請求を拒否できる場合とは、もともと年休の請求が出来ない場合に請求をしてくるケースです。

それは、もともと所定労働日になっていない日に年休取得の請求を行うことです。

年休を取得するということは、所定労働日(働かなければならないとされている日)に、労働義務を免除することを意味します。

そもそも働く義務のない日について、年休の請求をだされても、権利がないので拒否が出来るということです。

当たり前のことのようですが、都度都度このような場合のご相談を頂きます。

代表的な例としては、退職願を出しているのに、そのあとで年休の取得を請求する場合。

5月31日付で退職願を出している従業員が、年休が10日残っているので6月に入ってから消化して退職したいと申し出てくる場合があります。

しかし従業員としても身分は5月末日で失ってしまうわけなので、6月にはそもそも労働義務は発生しません。

よって労働義務が発生しない日の年休取得の請求は拒否できるということになります。

そういう意味では、従業員が退職を申し出た際には、なるべく早い段階で退職願で退職希望日を確定させることが求められます。

まあ、そうはいっても、退職時の扱いによってトラブルに発展するケースもありますし、会社側としても十分な引き継ぎを行うためには、希望する退職日を繰り延べてもらう場合もあります。

そのような場合には、十分に誠意をもって話し合いをしたうえで、退職時の年休の未消化分の取り扱いについて決めていく必要があるでしょう。

 

もう一つ拒否できる場合としては、特にパートタイマーに多く出るケースです。

週3日勤務として雇用契約しているパート従業員がいて、月・水・金の勤務であって、火曜日に年休の請求を行うことがあっても、そもそも火曜日は所定労働日ではないので、拒否できることになります。

このケースのご相談が意外と多いのが実態で、最近特にパート従業員でも年休が取得できるとして、所定労働日以外に請求するといった場合が散見されます。

ある会社では、月・水・金の勤務のうち、自己の都合で水曜日の勤務を木曜日に変更したうえで、水曜日を年休として請求した例がありました。

会社からは年休の金額の相談であったのですが、そもそも取得できない=拒否できるケースとして回答しています。

 

このように実務においては、年休を請求できない場合にも請求することがあり、拒否できるということになります。

 

従業員としても色々と情報を入手しやすくなっていますが、正しい情報に因らないで会社に要望してくることも種々あります。

会社としても労働法の正しい知識と見解に基づいて、誠実に対応して頂ければと願います。

 

荒木

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